毎日地下鉄に乗車する犬に追跡装置をつけた結果が衝撃的だった・・・

結衣 田中
2 3月, 2022

いつものように地下鉄の駅で待っていたアミールは、他の通勤客に混じって意外な乗客がいることに気づいた・・・信じられないことに、同乗者は犬だったのだ。最初は、その犬が誰かのものかと不思議に思ったが、そうではなかった。もう黙ってはいられない。犬がどこに行ったのか調べなければならない・・・ しかし、犬の動きを追っているうちに、彼は何かおかしなことが起こっていることに気付いたという。その犬は使命感に燃えているようで、一度も道を外れることなく、人ごみの中を目的を持って移動していたのだ。アミールは好奇心から、この謎の真相を突き止めることにした。 しかし、犬が何をしているのか気づいたとき、見逃すわけにはいかないことを知る。アミールはためらうことなく電話を取り出して当局に電話をかけた。早急な対処が必要な状況だったのだ。

その日は、月曜日の朝のラッシュアワーで、誰もが時間通りに目的地に行くためにギュウ詰めの状態だった。アミールにとって地下鉄駅の喧騒はもう慣れっこである。電車を待つ間、自分の世界に入り込み、急いで通り過ぎる通勤者の群衆をざっと見わたす。 その雑踏の中で、彼はあるものに目を奪われた。二度見せざるを得ないものがいたのだ。大勢の人が行き交う中、一匹の犬がホームで静かに座っていた。最初は、この犬は誰かのものだろう、おそらく次の列車を待っている乗客のものだろうと思ったという。しかし、よく観察してみると飼い主の姿もなく、一匹でいることがわかった。
アミールは、地下鉄の駅でこんなことが起きるとは思ってもいなかった。いつもなら車で行くところだが車は修理中。これから数日間は珍しく地下鉄で移動する予定だったと言うから相当な偶然だと言えるだろう。しかし混沌とした駅の中で弱々しい犬の姿を見ると胸が痛んだ。 ところが、列車に乗り込むと、犬も一緒に飛び込んできたのだ。アミール以外、誰もこの犬に注目する様子はない。大勢の観客は、座席を確保することの方がはるかに重要なようだ。誰もが押して急いで乗り込もうとしており、電車内に犬がいることすら気づかない。アミールは一体何が起こっているのかと疑問に思った。
全員が席を確保すると、アミールは群衆の中をうろついて犬を探した。しかし、地下鉄は混んでいて、犬を探す間もなく電車が自分の駅に着いてしまった。仕事に行かなければならない・・・ 当初、彼はその犬が野良犬で、意図せずに電車に乗り込んだのだと思っていた。だからこそ、その犬のことは忘れようとしたというが、彼らの物語はまだ終わらない。
家に帰ると、もう二度とその犬に会うことはないだろうと思っていたが、驚いたことに次の日もまた同じ犬が駅で地下鉄を待っていたのだ。そして、これはほんの始まりに過ぎず、次の数日間もそこにいた。 その犬は、彼と同じ駅で地下鉄に乗り、数駅乗って、都心の駅で降りるのだという。アミールは、小犬の話がずっと気になっていたのだが、なかなか近寄る機会がなかった。通勤客に餌付けされた野良犬なのか、それともさらなる謎が隠されているのだろうか?
そんなある日、地下鉄の車両から犬が無理やり追い出されるという悲しい出来事を目撃した。アミールは止めようとしたが、列車はすでに出発し、犬は乗客の間を縫うように走って消えていってしまった。 アミールは窓から、その犬の様子がおかしいこと、混乱していること、不規則に動いていることを確認したが、列車はもう走り去ってしまったので、助けることはできなかった。小さな犬が苦しむのを見るのに耐えられないとまた胸が高まり痛んだ。
そこで彼は子犬を助けることに決めたが、まず場所を特定することが先決である。翌日、アミールは犬のおやつを持って出勤することにした。同じ地下鉄の駅でダラダラしていると、しばらくして犬が現れた。茶色の毛並みはいつもより少しごわついているように見える。 最初は躊躇していた犬も、アミールの優しい接し方とアプローチに心を奪われていく。アミールは犬を撫で、おやつをあげた。子犬は御馳走を受け入れ、喜んで尻尾を振ったという。アミールは満足感を覚えつつも、そこで止めるつもりはなかった。
車の修理が完了したとの連絡を受けたが、アミールは犬を助けることに専念するため、当面は地下鉄を利用して通勤することにした。直った車はいつでも乗れるが、犬は今にでも危険に陥るかもしれないし、助けが必要かもしれないと考えたからである。 再度放浪中の犬に遭遇したアミールが当局に連絡したところ、近くの動物保護施設を紹介された。当初、この話を聞いたシェルタースタッフは、彼と同じように困惑していたという。犬を保護して里親を探そうと考えていたものの、それではこの犬の日常と目的の謎は解けない。
家で犬を待っている人がいるかもしれないし、世話をしているかもしれないし、スタッフも確信が持てなかった。そのため、保護施設のスタッフは犬に追跡装置をつけて、その動きを追跡することを決断する。犬の信頼を得るのは難しい作業だったが、アミールの協力でなんとか実現したという。 その後はトラッカーが起動するのを待つだけだ。ようやく犬の行き先を確認したスタッフは唖然としたという。今まで見たこともないようなものだったからだ。たった1日の内容は衝撃的なモノだった。
犬が毎日なぜ街中を旅しているのか、なぜこんなに遠くまで移動したのかは誰も知らない。毎日同じパターンで放浪の旅に出て、夕方には出発点に戻るというルーティンである。不思議に思った動物保護センターの職員は、歩いてその犬を追跡することにした。 するとこの犬の名前が「ボジ」であること、地下鉄の列車やフェリーに乗っている地元の人たちが犬の写真を撮っていることがすぐに発覚した。ボジは公共交通機関のルールを熟知しているようで、乗客が降りるのを待ってから、空いている電車に乗り込む。地下鉄や鉄道の駅では、天気の良い日はテラスで待ち、寒い日や雨の日は室内で待つ。
スタッフはボジの頭の良さに驚き、追跡装置をよく調べてみると、ボジは1日に約29カ所の駅に行き、27〜30キロメートルの距離を移動していることがわかった。野良犬のボジは、サイタス・カンガルとシェパード犬というユニークなミックス犬で、トルコ鉄道用語からその名前が付けられたそう。 路上生活ではあるが、健康診断と不妊手術を受けていたことから、以前は家族がいたことがうかがえる。食べ物を求めていろいろな場所を探索するのが日課で、人々は喜んでおやつを与えてくれた。彼の人気は高まり、自身のInstagramやTwitterのアカウントで何千人ものフォロワーを集め、インターネット上で話題となっていたのだ。
ボジの存在を知った写真家のクリス・マクグラス氏は、実際に犬を見るためにイスタンブールまで足を運んだひとりだ。クリス氏はポジの旅が日常的なものにとどまらず、週末にはフェリーでプリンセスアイランドまで行っていると報告した。どのフェリーを選べばいいのか、フェリーの乗る側の好みさえも理解しているという。 他にも奇妙な行動はいくつかあった。市役所の職員によると、ボジはいろいろな乗り物のエンジンの違いを楽しんでいるようだという。フェリーに乗っているときは、振動のためかエンジンのある後ろの方に座っていたとクリスは説明する。一方メトロでは、台車部分の車輪の真下や上に座っている。トルコ鉄道の用語では、この台車部分を「ボジ」と呼んでいるのだ。
野良犬がイスタンブールの街角で十分な食料を見つけ、生きていくことができるのはなぜなのだろうか。路上での生活はどんな動物にとっても危険だが、イスタンブールが他と一線を画す理由は何なのか?実はこの街は「野良犬の街」として有名で、数え切れないほどの野良犬や野良猫が徘徊している。 しかし、イスタンブールの野良犬は、世界にあるどこの国の野良犬とも違う。市には、街を歩き回る膨大な数の野良犬を保護するプログラムがあるのだ。自治体が餌を提供し、すべての野良動物に避妊去勢手術や去勢プログラム、救急医療サービスを提供している。
十分な食料を確保することは、ボジにとって困難なことではなかった。クリス氏の話によると、レストランや家の隅に隠れている動物たちのためにエサや水入れが用意され、ボジはどこに行けばいいかわかっているそう。自治体は、ボジとの交流の仕方を案内するために、交通機関にチラシを掲示することさえ検討しているくらいだ。 イスタンブールの住人は、ボジについてどう思っているのだろうか?クリス氏は、ボジがレストランに入ると、二人の男が彼を追い払って怒鳴りつけたと語っているが、そのとき別のレストランのオーナーが男性に向かって、彼を怖がらせないようにと激怒したという。
ボジは今や有名人であり、地域の人々だけでなく、自治体職員からもマスコットとして大切にされている。ボジが有名になった後、市の職員は彼を獣医の定期検診に連れて行き、人間との交流が彼や彼が毎日会う人々にとって問題にならないように行動研究も行った。 トレーニングキャンプに連れて行き、TLC、グルーミング、ワクチンを与え、追跡用の首輪を修理。約1週間かかり、ボジが健康であることが確認されると、彼はまた街に解放される。メトロ駅の一角に小さな犬小屋も作ってあげたというから驚きである。
ボジによる電車旅が広く知られて以降、彼のTwitterとInstagramのアカウントには7万9千人以上のフォロワーがおり、世界的な存在となっている。ファンの多くは、イスタンブールの通勤客で、個人的に彼に遭遇したことがある人たちだ。「電車に乗ると、そこにボジが座っているんですよ。微笑んでその瞬間を楽しんでください」と、イスタンブール地下鉄の職員であるアイリン・エロール氏は言う。 また、ボジは犬小屋に戻ると自治体の職員が食事を提供してくれるのだが、一箇所に長く留まることは好まず、動き回ることを選択を常にしている。しかし彼のことはスタッフがモバイルトラッカーを使って、離れたところから見守っている。出典Getty Images/ Chris McGrath 2021, Youtube/ CreepyWorld , iStock/ Getty Images/ Lesliejmorris