熊との距離を保つことがルカの意図であったが、それは驚くほど簡単なことであった。ルカが近づくと、クマは前へ前へと出てきて、両者の距離を保っている。
そのときルカは、もしかしたらクマも同じような不安を抱いているのかもしれないと思った。熊は、ルカが熊に対して抱いているのと同じように、自分に対しても警戒心を抱いているようだった。
熊の存在を知ってから参加した地域の自然観察会で学んだことと矛盾するような、前代未聞の体験だった。
家族を守るために、必要な知識を身につけようと思ったのが最初の動機だった。しかし、今の状況は、あの時の警告や忠告とはまったく食い違うものだった。